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ひとしきり傷を舐めて、次は顔さえも、舐めてきた。



「ちょ、くすぐったいよ」



耳を撫でると気持ちいいのか、すりすりと肩に頬をすりよせてきた。



「そうだ、飯……冷めたな、温めるし、待ってろ」



ベッドに少年をおろして、立ち去ろうとしたけれど、



「にゃっ、にゃあっ」



ばたばたと、音がした。
少年が這うようにして、けれど痛むのか足は引きずって、俺の足元へとやってきた。



「え、どうした」



足元でにゃあにゃあ鳴くので屈むと、首に腕を巻き付けて、ぎゅうっと抱き締められた。



「にゃー……っ」



少年は、泣いているようだった。

この少年が、誰なのかわからない。
人間なのか、猫なのかもわからない。
どこからきたのか、今いくつで、どうやって生きてきたのかも、わからない。

言葉さえも、わからない、それでも。



「……一人にしないよ」



置いていかないで、と。
一人にしないで、という思いだけは、はっきりと伝わって。



「にゃ、にゃ……」



すり、とすりよせる。
その体温が、心地いい。

この弱い生き物を、守りたいと、思った。



こうして俺は、捨てられたねこを、飼い始めた。



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