5
 

「大丈夫か、」



いつまでも這い上がる様子はなく、地べたでジタバタしていたので、そっと覗いてみた。



「にゃう、」
「っ」



足を、怪我しているようだった。
少年はぺろぺろと、足首を舐めていた。
そういえば一度も、歩いたり走ったりしていない。
庇うようにしている足は、赤黒く、腫れてしまっていた。
もしかしたら、折れているのかもしれない。



「にゃ、にゃあ……っ」



ふらついてもいる。
無数の怪我も残っている。
足も、歩けないほど。

迷ってる暇なんて、なかった。



「ごめん、」



一つ謝って、勢いで少年を抱き上げた。



「にゃあっ、にゃっ、にゃあーっ!」



案の定暴れて、引っ掻いてくるわ、仕舞いには首に噛みつかれたりもした。

けれど、こんな痛みは耐えられた。
身体の割には軽い体重や、傷だらけの――恐らく、過去の傷跡もある――肌。
そんなものに比べたら、今肌に伝う血液でさえ、無視することができた。



「ごめんな、怖いよな、でも、怪我の手当てしたいから」
「にゃ、にゃあっ!」
「ん、引っ掻いても噛んでもいいから」



抱き抱えるように、身体で押さえつけるようにして、一つ一つ手当てをした。
それは時間がかかり、すべての手当てが終わる頃には、少年は疲れてぐったりしてしまっていた。



「ん、終わり」



身体中、ガーゼだらけだった。
ひきつった皮膚は、ろくに治療もされぬまま、放置した痕だろう。
風邪をひく、と俺のシャツを着せて、頑張ったな、と頭を撫でた。



「にゃ、ぅ……」
「痛いとこない?お腹すいたろ?」



少年は、もう暴れなかった。
無垢な瞳でじっとこちらを見ていて、さながらねこのようだった。

少年はそっと、傷だらけになった俺の腕を舐めた。
ちりっと、それは傷に染みた。



「痛っ」
「っ、」



びくんっ、と少年は驚く。



「ごめ、大丈夫」



怯えさせないように言うと、恐る恐る、また舐めてきた。



「にゃー……」



傷に染みて時おり傷むけれど、少年の慈しむような、まるで、ごめんなさいと謝っているようなそれを、止めることはできなかった。



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