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それからも、少年の警戒がとかれることはなかった。
同じ部屋にいるとひどく神経を使うようで、飲み物や食べ物、一応救急道具などを寝室において、俺はリビングに退去した。
人が動く気配がしていたのだが、しばらくたって、物音一つしなくなった。
そっと、ドアをあけた。
(………寝てる)
ベッドの上に図々しくも乗っかって、踞っていた。
すやすや眠る様子は、先程の姿からは想像もできないものだった。
食事には全く、触れた様子はなかった。
(なんなんだ、お前は……)
ゆっくりゆっくり近づいた。
疲れていたのか、眠りは深いようだった。
そっと耳を撫でると、ぴくっ、と動いた。
(ねこみてぇ)
いや、ねこなのか?と自問した。
裸の身体は相変わらず汚れていた。
風邪引きそうだ、と思うと同時に、今なら、と濡れたタオルを持ってきた。
静かに抱き上げると、少年はくたっ、と頭を俺の肩に預けてきた。
それをいいことに、身体をふいてやる。
風呂はまた、起きてからがいいだろう。
素直に入ってくれるかは別として。
「ぅ、」
「あ、ごめん」
引っ掻き傷に、タオルが触れてしまった。
呻いた声に思わず謝ると、ぱちっと少年が目を覚ました。
「にゃあっ、にゃっ」
「わ、落ち着けっ、こら引っ掻くなっ!」
ばたばたと暴れては、腕に引っ掻いてきた。
身体を離してやると咄嗟に距離をとられ、ベッドの端で牽制される。
(参ったな、)
どうしようかと考えあぐねていると、ふらりと少年がベッドから落ちた。
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