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「え、おまっ、え、どっから、」
「なぅ、」



その少年は、壁と本棚の間で、縮こまっていた。
年は中学生くらいだろうか、おとこにしては華奢な身体つきをしていて、裸というところ以外は一見おかしいところはなく。



(………え?)



尻尾の模様が、昨晩のねこと、ひどく似ていた。
非人間的なその姿は、どうやら俗に言うコスプレまがいのものではないらしく、少年の感情にまかせて耳も尻尾も動いていた。

頭の中の整理が追い付くまもなく、しかしそれを中断させられた。



「なー…なーっ…」
「っおい、」



少年は、ガリガリと壁に爪をたてていた。
ねこの爪に似ているそれを、俺が眠っている間に何度も突き立てたのだろう、壁には幾重もの傷が残されていた。
そしてそこに滲む、血。



「やめろ、怪我が」
「にゃあっ、にゃあーっ……!」



近付こうとすると、ひどく怯える。
同時に、尻尾を立てて威嚇してくる。



「くそ、なにもしねぇから、っ」



こちらの言葉が、人間か猫かもわからない少年に通じるのか。
涙を浮かべた大きな目に、これ以上近づくことは憚られた。



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