3
「ん、ぎゅーしよっか」
「ぅ、う」
小さな身体を包んでやると、必死にしがみつく腕がある。
まるで、あの夜のように。
捨てられたばかりの、震えていた猫。
りんはあの夜のまま、変わっちゃいなかった。
そうして誰かの、体温を求めていた。
同時に傷つけられる怖さに、怯えていた。
「大丈夫、俺は、ここにいるから」
「しょ、しょぉ、」
「ん、怖くないよ」
すがり付くような、背中に立てられる爪も。
匂いを残そうと擦り寄る身体も。
存在を確認するように、首に噛みつく仕草も。
言葉がなくても、わかることがある。
「にゃ、ぁ」
「絶対に捨てたりしないよ。もう、独りにしない」
「にゃあー……っ」
猫を飼うのも、悪くない。
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