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猫なんだか人間なんだか、よくわからないりんは、ほんの少しだけ話せるようになった。
俺の名前と、鳴き声以外の喃語。
表情も、当初に比べれば随分と豊かになって、それがすごく嬉しかった。



「りん、寒くない?」



布団にくるまりながら聞くと、ふるふると首を横に振られた。
布団の中とはいえ、薄着のりんは風邪をひかないか心配になる。

下は尻尾があるせいか履かせると嫌がるから、常に下が隠れるくらいの大きめのシャツ一枚という姿で過ごしている。
上だけでも着てくれるようになったのは、大きな進歩だったりする。



(俺も眠くなってきた……)



予定もないし、もう一眠りするか、と目を閉じた。

……が。



「……っ、ちょ、こら」



ぺろ、と顔を舐められる。
慌てて目を開けると、不安そうな顔でこちらを見ているりんがいた。



「しょぉ、しょお」
「ん、なに、くすぐったいよ」
「しょぉ……」



りんは何度も呼びながら、俺の顔を舐めた。
動物のそれとはいえど、人間にされてる感覚ではあるから、平然としてはいられないのは事実。



「いいかげん、にっ……」



首根っこをつかんで(正確にはシャツの襟だが)引き離すと、ぱた、と頬に水滴が落ちた。

涙。
ようやく顔をあげたりんは、ぽろぽろと、大きな目から涙を流していた。



「なっ……どした?どっか痛い?」



起き上がって身体中を見てみるけれど、怪我をした様子はない。
発展途上とも言える白くて細い身体が、微かに震えていた。



「ぁ、あ……」
「りん、」
「……あー……っ」



感情を言葉に出来なくて。
言葉を知らなくて。

けれどりんは、震える手を俺に伸ばしてくれた。



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