1
side.千夏
「う……?」
「おはよう、ちな」
朝はいつも、きらきら眩しい。
隣がもぞもぞとしたから目をさますと、ゆうじがにこりと笑って頭をなでてくれた。
ご飯、つくるね、と言って、ベッドから出ていってしまう。
僕はのそのそとベッドの中でうずくまった。
おふとんは、まだ温かい。
温かいところから出るのは、おっくうだった。
うずくまった先に、僕の左腕が見えた。
白い線がたくさん入った僕の腕。
「…………」
地図を辿るように、右手の指で線をなぞった。
僕が傷付けたそこは、ぽこぽことでこぼこができて、ふさがっている。
汚いなぁ、って、思う。
ゆうじは、とても綺麗だ。
綺麗に、わらう。
綺麗な手で、僕をなでてくれる。
僕のように、傷あとはない。
布団から腕を出して、伸ばしてみた。
弱弱しく伸びた、細くて汚い腕。
ひらひら、と宙に揺らしてみた。
「ちな?」
なかなか起きてこない僕を起こしに、ゆうじが戻ってきた。
前へ top 次へ