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頭を撫でて一息つくと、千夏は堰が壊れたように泣きだした。
「ふ、ぅ、っ……ぇっ」
「えっ、どうしたの、ごめん、そんな俺怖かった?」
泣き終ったと思ったから慌てると、千夏はぶんぶんと首を横に振る。
「き、きら、に、なったかと、思っ……」
千夏にとって一番怖いのは、俺に嫌われること。
喧嘩してもそれが解決すれば終わり。
嫌われたら、もう戻らないから。
「ごめんなさぁい……っ」
「あぁもう、ほら、泣かないで」
こんなに自分を好きでいてくれて、嫌われるのを恐れている存在がある。
「嫌いになんてならないよ」
「でも、我が儘、ゆったっ……」
「ちゃんとごめんなさい出来たから、それはいいの」
「う、っ……ひっく、」
「泣かないで」
離れないように、離されないようにと、俺にぎゅうぎゅう抱きついてくる。
すんすんと鼻を啜りながら泣き疲れて眠るまで、俺はずっと、千夏の背中を撫で続けた。
(嫌いになるわけない)
(こんなに愛しいと思うのに)
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