5
ゆっくり理解したのか、千夏は手で涙を拭きながら呟いた。
「ごめ、なさい……」
そんな千夏を見て、愛しくなる。
千夏はきっと、ずっと俺が傍にいてほしかったんだろう。
それは痛いほどわかるから。
「ん、よく出来ました。仲直りしよ?」
「ん……」
ぎゅう、と抱きしめてやると、千夏も小さく抱きしめ返してくれる。
「俺はね、千夏のことは誰よりも、一番に好きだよ。でも、千夏のことばかり考えていられないし、千夏もそう」
「……いなく、なる……?」
「いなくならないよ。ずっとそばにいる。でも、いつだって二人だけだったら、生きていけないでしょ?」
医者であり治療も担う父や、瀬谷先生、看護士さん、篠崎さんに、遊んでくれた悠や日向。
そういう人たちがいるから、俺達は一緒にいられる。
難しいけれど、少しずつ伝えた。
「だから、周りの人も大事にしたいの。わかる?」
「ん……大事に、する……のに、じゃまして、ごめんなさい……」
千夏は理解してくれたようで、褒めるように頭を撫でた。
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