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「おいで」



腕を引いて、ベッドに座った俺の膝の上に座らせる。
千夏はずっと俯いて、目を合わせようとしなかった。



「ちな、どうして隠れたの」
「っ……」
「ちな」



答えない千夏を促すように、掴んだ腕を強くする。



「ゆじ、が、怒ってる、から……」
「何で怒ったと思う?」
「ぼ、僕、わがまま、したから」



千夏はじわりと目に涙を浮かべた。
大丈夫だ、きちんとわかってる。



「何が我が儘だった?」
「っ……でんわ、待っててって、言ったのに、僕、待てなかった」



それも我が儘だけど、ちょっと違う。



「ん、それもだけど、俺は大事な話をしてたの」
「大事……」
「そう。例えば俺と千夏がこうやって話してるとき、違う人が来て話しかけてきたら、どっちと話していいのかわからなくなるよね」
「ん……」



俺は千夏が一番大切だけれど、つねに一番に考えて行動できるわけではないこと。
それがわからないと、千夏は一人で生きていけなくなる。



「だから、まずは電話の人と話をしようと思って、ちょっと待っててって言ったの。もし千夏だったら、そんなときに違う人から話しかけられたら、どう?」
「……困る……」
「ね。だから、俺は怒ったの。待っててって言ったでしょ、俺はこの人と今は話してるんだよって」



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