2
「あ、あった。えっと、その書き方は」
俺の代わりに生徒会副会長の仕事を受け持ってくれている相手に、おざなりな返事は出来なかった。
書類の書き方やら色々と話しこんでいると、千夏が寄ってきた。
「……?」
きゅ、と空いた手を握られる。
じっと見上げられて、電話が終わるのをいつかいつかと待っているのだろう。
「ごめん、ちょっと待っててな」
電話口を肩で塞ぎながら千夏に伝えて、頭は仕事に切り替える。
思ったよりも説明が手こずって、相手には申し訳ないばかりだった。
「うーん、それは俺が直接やった方が良いかな……期限は、」
重要な書類の扱いに関して話をしていると、ぐいっと千夏が腕をひいてきた。
むっとした表情で、ぐいぐい引っ張ってくる。
こんな表情をするのは初めてだなぁと思いながら、
「千夏待って、今話してるから」
「うーっ」
諭すように言っても、千夏はぐいぐいと腕を引くだけだった。
仕事の行き詰まりや、書類の提出期限の焦りもあって、頭がごちゃついていた。
ちょっとだけ苛立って、引かれる腕に力を入れる。
びくりと動かなくなった俺の腕に、千夏は驚いたようだった。
「ちな」
堅い声で名前を呼ぶと、千夏はきゅっと眉を寄せた。
前へ top 次へ