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side.千夏
次にめをさますと、白い部屋だった。
嗅いだことがないにおいがした。
ぴっ、ぴっ、と変なおともした。
ドアがあくと、白い服のひとがやってきた。
怖かった。
知らないことばかりだった。
ただ一つわかるのは、僕は、しねなかったということ。
「………千夏、おはよう」
柔らかい声がした。
はじめてだった。
忘れかけていた、僕の、名前。
忘れかけていた、人のてのあったかさ。
「今日はいい天気だね」
「一緒に寝ようか」
「寒くない?」
「歩く練習をしよう」
少しだけ、いきてみようと思った。
いつかしぬなら、まだ、あと少しだけ。
少ししたら、僕はしぬから。
少しだけ、夢をみていたかった。
夢をみたくて、僕はまた、目をつむった。
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