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千夏は最近、よく笑うようになった。



「……ふふっ」



フローリングに座って、膝の間の千夏を抱き締めた。
うなじに顔を埋めるようにすると、くすぐったいのか、くすくす笑う。
仕返しと言わんばかりに、千夏は俺の胸元にぐりぐりと頭を寄せる。
仔犬のようなそれに、俺も笑ってしまう。



「……あ」



ポケットの中で携帯のバイブがなり、千夏を抱き締めたまま開く。
瀬谷先生からのメールだった。



『不安定なときもあるけど、千夏くんは大丈夫です。君が一番のお薬みたいですね』



千夏のシャツの間から見える、鎖骨の傷。
隠れている傷跡もたくさんあって。
記憶の中の傷跡もあって。

左腕の包帯だって。
いつかなくなるのだろうか。



「……こわぃ、ゆめ、みても」



柔らかい笑顔で、千夏は言ってくれるから。



「ゆぅじがいるから、こわくないよ」



このこのためなら、何も怖くなんかない。



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