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心も体も良くなってきているとはいえ、それは簡単にいくものではなかった。
「っぅ、あ、あー……っ」
うとうとし始めた千夏をそのままソファに寝かせ、背を向けてテーブルで課題をしていたときだった。
突然の声にかけよると、ソファの上に蹲る姿。
「ちなっ」
「あ゛、ぁ、」
寝言なのだろう、ぎゅう、と目を瞑ったまま。
顔の前に持ってきた両手、けれど右手はしっかりと左手首を掴んでいて。
爪が手首に食い込み、皮膚を切るほどの、強さと苦痛。
「ちな、起きて、っ」
肩を揺らすと、身体が大きくびくりと跳ねた。
ばっ、と開いた眼は、焦点があっていなくて。
「ぃや、やぁ、っ……」
「千夏、俺の声、聴こえる?わかる?」
身体を起こして顔を覗き込むけれど、千夏はかぶりを振って避けた。
抱き締めようとしても、腕を突っぱねられる。
「落ち着いて、大丈夫だからっ」
「やあぁぁっ!やー……っ!」
ばた、と暴れられて。
振り回された千夏の手が、俺の頬に当たった。
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