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「じゃあね、千夏くん!羽鳥先輩も、また学校で!」
「ん、今日はありがとな」
「………」
千夏は黙ったまま。
……違う、かける言葉がわからないんだ。
「ちな、さようならって」
「さよなら、?」
「ん、また来てねって」
千夏の手をとって、二人に振ってやる。
「さよ、ならぁ」
「さよなら、千夏くん」
「さよなら」
珍しく悠が、無垢な子供と接するように笑って言った。
こちらに背を向けて歩き出した途端、日向が少し怒ったように悠の背中を叩いている。
やきもちかな。
最初はどうなるかと思ってた。
千夏は怖がるだろうと思っていたし、二人も、年齢にしては幼すぎる千夏に戸惑うんじゃないかと思っていた。
けれど事情を話せばわかってくれたし、千夏も順応していった。
すごく簡単そうで、すごく大きな進歩だ。
「お友達、できた」
「ん」
「ふふ」
嬉しそうに、千夏が笑う。
友達ができた、たったそれだけのことなのに。
だから俺も嬉しくなる。
もっともっと、楽しいことでいっぱいにしてあげたくなる。
「そうだ、篠崎さんに手紙書こっか」
「書く!」
素敵な便箋を買いに行こう。
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