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「あ、い、う、え、おっ……」



小さな声で言いながら、紙にペンを走らせる。
ソファで雑誌を読んでいると、テーブルから千夏がやってくるのがわかった。

できたかな。



「ゆじっ……」
「うん?」



見せてくれたのは、紙に書いた文字。
簡単なひらがなは、千夏にとっては難しいもの。
一生懸命なそれに嬉しくなる。



「ん、よく書けました」



頭を撫でると、ふゃ、と安心したように笑う。

篠崎さんが来た日から、千夏は精神的に安定した。
体調も前より良くなって、俺が学校に行ってる間にたくさん勉強している。



「……あ」



時計を見ると、午後14時前。

実は今日、悠達がやってくる。
千夏には内緒だ。

休みの今日にまで生徒会の仕事をするつもりはなく、遊びにくるだけ。
悠は以前から千夏に会いたがっていたし、そろそろ千夏も世界を広げていいんじゃないかと思ったから。

千夏が怖がれば帰るとも、悠は了承してくれた。



「ちな、俺ちょっと出掛けてくるね。すぐ帰ってくるから、お留守番できる?」



飲み物やお菓子を買いに行こうと考えた。

出掛けるという言葉に少ししゅんとしながら、お留守番という言葉に千夏の表情が変わる。



「できるっ」



この笑顔が、消えなければいい。



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