2
「どうしたの、ちな」
「っ、」
ぽんぽん、と背中を叩く。
千夏の首筋に顔をうずめると、ふわりと優しい匂いがした。
「あ……あの、ね」
「うん?」
か細い声を、耳を寄せて拾う。
「ゆじ、に、あえて、よかった」
執事―――篠崎さんがいたから、生きていけたと。
俺に出会うことができたのだと。
ゆっくりゆっくり、千夏が話す。
「俺も、千夏に会えてよかったよ」
言うと、千夏がぱっと顔をあげた。
すぐにくしゃりと顔が歪んで、また泣き出してしまう。
「ほら、泣かないで、眠たくなっちゃうよ?」
「ふ、っぅ、」
「あったかいココアでも作ろうか」
立ち上がろうとするけれど、千夏は離れようとしない。
「ちな、ちょっとの間だけだから、ね?」
「っ……」
言い含めると、ゆるゆると腕が離れていった。
そっと頭を撫でて、キッチンに向かう。
けれど、後ろから聞こえる足音。
きゅ、と服の裾を掴まれた。
「うん、一緒にいこっか」
千夏の歩幅にあわせて、ゆっくり歩いた。
前へ top 次へ