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「どうしたの、ちな」
「っ、」




ぽんぽん、と背中を叩く。
千夏の首筋に顔をうずめると、ふわりと優しい匂いがした。



「あ……あの、ね」
「うん?」



か細い声を、耳を寄せて拾う。



「ゆじ、に、あえて、よかった」



執事―――篠崎さんがいたから、生きていけたと。
俺に出会うことができたのだと。

ゆっくりゆっくり、千夏が話す。



「俺も、千夏に会えてよかったよ」



言うと、千夏がぱっと顔をあげた。
すぐにくしゃりと顔が歪んで、また泣き出してしまう。



「ほら、泣かないで、眠たくなっちゃうよ?」
「ふ、っぅ、」
「あったかいココアでも作ろうか」



立ち上がろうとするけれど、千夏は離れようとしない。



「ちな、ちょっとの間だけだから、ね?」
「っ……」



言い含めると、ゆるゆると腕が離れていった。
そっと頭を撫でて、キッチンに向かう。

けれど、後ろから聞こえる足音。
きゅ、と服の裾を掴まれた。



「うん、一緒にいこっか」



千夏の歩幅にあわせて、ゆっくり歩いた。



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