1
 

篠崎さんは、帰っていった。

今は義父の元を離れ、仕事をしているそうだ。
また会いにきてもいいか、との問いに、俺は迷わず肯定した。



千夏は、あれから泣いた。

悲しいのか、苦しいのか、嬉しいのか。
何度も何度も、しつじ、と呟きながら泣いた。

本当は、少しだけ怖かった。
千夏は篠崎さんを怖れなかった。
むしろ、必要としていた。



俺のそばよりも、篠崎さんの方が、いいと言うんじゃないかと。
篠崎さんと共に、行ってしまうんじゃないかと。



そんな憂いを吹き飛ばしたのは、必死に俺にしがみつく、千夏の小さな身体だった。



「ちな」
「っ………」
「……泣かないで」



ぽろぽろと泣きながら、ソファに座る俺の膝の上に座って、ぎゅうぎゅう抱き付いてくる。

まだまだ平均を大きく下回るけれど、最初の頃よりは成長した身体。
そっと背中を撫でて、千夏が落ち着くのを待った。



前へ top 次へ

 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -