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side.千夏
痛いことがおわって。
ぼくは、ベッドにいて。
くるしくて。
よるは、きらい。
このまま、息が止まればいい。
「失礼します」
ドアが開いて、誰かが入ってくる。
ぼくはつかれて、目をつむったまま。
「お身体を、」
そういって、身体がもちあげられる。
ふわ、と柔らかいタオルが、肩をつつむ。
「熱くないですか、千夏様」
ぬれた、あたたかいタオルで、ぼくの身体をふいてくれる。
なんども、ていねいに。
そして、最後は、
「……ごめん」
ぼくを、だきしめる。
今なら、わかるよ。
目をつむっていた僕には、無感情だった僕には、わからなかったけれど。
今なら、わかる。
肩にぬれた感触。
ふるえる声。
やさしい、手。
「………ごめん、」
今なら、わかる。
あなたは、泣いていたの。
あなたはぼくを。
ぼくを、助けようとしてくれたの。
無意識に、まってた。
ドアがあくのを。
柔らかいタオルを。
いい匂いを。
優しい、声を。
ぼくが、あのとき、生きていけた理由。
いま、ゆうじに会えた理由。
だから、なかないで。
ありがとう。
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