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それは、休日の昼下がりのこと。
「佐伯千夏さんは、いらっしゃいますか」
突然の、訪問者。
二十代後半くらいの長身痩躯な男は、柔らかな笑顔を見せた。
少しだけ、千夏と似た雰囲気のする人だった。
「急に、申し訳ありません」
千夏に害をもたらす人ではないことは、なんとなくわかった。
千夏はまだ部屋に残したまま、応接間に通して対峙する。
「あなたが、今の千夏の……いえ、」
「……あなたは、」
「篠崎弥生と言います」
篠崎さんは、深々と礼をした。
礼儀正しいというか、なんとなく、型にはまった動きに違和感があった。
「……どうして、千夏を」
「………あなたは、私を憎むかもしれません」
妙な前置きのあと、篠崎さんは、深く息を吸った。
「昔、千夏さんを――――」
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