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side.千夏
目を覚ますと、ゆうじがいて。
「おはよ」
ゆうじの笑う顔がすき。
やわらかい匂いがすき。
これはなんて感情?
わからないから、ただ、ゆうじに寄る。
ぎゅう、と大きなせなかに手をまわすと、あたまの上でふふ、とわらって、ゆうじが僕を包んでくれる。
「ゆうじ、ゆ、じ」
しあわせだった。
初めてしった。
もう、なにもいらなかった。
「どうしたの、ちな、甘えんぼ」
ゆうじがそう言うから、なんだかくすぐったくて、頭をぐりぐりと擦り寄せる。
ゆうじはまたわらってくれる。
どうしてはやく、こんな毎日がやってこなかったんだろう。
僕はいままで、なにをしていたんだろう。
恐れるのはただひとつ。
ゆうじが、いなくなってしまうこと。
「ゆ、じ……?」
目をさましたそこに。
ゆうじの姿はなかった。
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