4
もしかして、あの音は。
ドアの前で今か今かと、俺の帰りを待っていた……?
「っ………」
「ゆ、じ……?」
咄嗟に顔をおさえた俺に、心配そうに声がかかる。
「おなか、いたい……?あたまいたい、?」
やばい。
めちゃくちゃ、嬉しい。
「ごめん、嬉しいの、俺」
誰か一人に、こんなに必要とされたこと、きっとない。
遊んでばっかりの俺は、ふらふらして、恋人なんてつくらなかった。
生徒会長の悠以外、特に親しい友人なんて作らなかった。
必要がないと思っていた。
自分のしがらみになると、思っていた。
それは、違った。
「うれしい、?」
「ちなが、俺のこと、待ってくれるのが」
「ゆじ、うれしい……?」
「ん、」
「っ、まつ、ぼく、ずっと待つ、うれしいの、がいい」
たまらず、抱き締めた。
こんな小さな子に、救われるなんて、思ってもみなかった。
ふわ、と千夏の匂いがする。
優しい、甘い匂い。
「俺、絶対帰ってくるからね」
「ん、」
千夏の隣にいるために。
前へ top 次へ