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俺と千夏の部屋は、別にはなった。
けれど形式的なもので、寝るときは一緒だ。
俺が帰ってくるまでは、千夏は一人で部屋で待っている。



「今日はね、いいものもってきたんだ」
「?」



足の間に千夏を座らせて、後ろから抱くようにした。
鞄から取り出したそれは、千夏のためのもの。
真っ白で、小さなそれ。



「携帯電話」
「けいた、い?」
「ええと……そうだ、」



多分、電話とかいうものもよくわからないのだろう。
俺は自分の携帯を出して、千夏の携帯に電話をかけた。



「わっ、わっ」



手にしていた千夏はおどろいて、ぽとん、とそれを落としてしまう。



「そこのね、ボタンを押してごらん」
「………」



長く響いていたコール音が、ぷつりと切れた。



「ここにね、そう、耳をあてて。そのままでいてね」
「……?」



安心させるように一つ頭を撫でて、千夏の傍を離れた。
反対側の壁に立ったまま、携帯に声を送る。



「千夏」
「っふわ!」



びっくりした声が、携帯からと、空いた耳から聞こえる。



「ゆじの、声が、する」
「千夏の声も、聞こえてるよ」



そのまま、俺は部屋を出ていった。



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