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しばらくして、男は保健室に到着した。
「ご連絡いただきました、雪村です」
「お待ちしておりました」
初対面のときと同じく、男は清潔感のあるスーツを着ていた。
二十代後半くらいで、見た目は優男そのものだった。
「……君は」
「……どうも」
「前に会ったね」
いつもありがとう、とにこりと笑顔を向けられる。
その一瞬の間に見えた、目の鋭さに、気付かないわけがなかった。
隠すつもりもない、牽制のようだった。
「……起こしても?」
「どうぞ。これから移動するところですので」
心配そうな、苦しそうな表情で、男は佐倉の顔を見ていた。
男はベッドに横たわる佐倉の傍に寄り、ぽんぽん、と肩を叩いた。
「伊織くん」
「ゆ、きむら、さ……?」
「大丈夫?具合が悪くなったって聞いたよ」
カーテンの影に隠れて二人の様子を見た。
佐倉は眠そうに目をこすって、男の姿を目に映して、
「!」
そっと、細い腕を男の首に巻き付けた。
男はそれに応えるように、佐倉の背中を抱き締めた。
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