2
 

『伊織?』
「申し訳ありません。私は保健医の穂積と申します」
『保健医?……伊織は、』
「佐倉くんは学校で体調を崩しておりまして、まだ眠っています。何度も着信がありましたので、急ぎの用事かと思いまして、お電話いたしました」



佐倉の携帯から漏れてきた声は、まだ若さの残る、柔和な雰囲気をしていた。
穂積の対応にまかせて、耳を澄ませる。



『そうですか……ご連絡、ありがとうございます。実は私、彼と一緒に住んでいるもので』
「……住んでいる?佐倉くんは一人暮らしとして学校に届けが出ていますが」
『偏見があるかもしれませんが、私は彼と恋人関係にあります』



その言葉に、穂積と目が合った。



「いえ、偏見はありません。つまり、佐倉くんはあなたと同棲をしていると?」
『はい。体調を崩しているようなら、今から学校へ迎えに行きます』
「……実は私は病院側から佐倉くんの日常の健康管理を任されているのですが、彼の症状は思わしくありません。十分な検査をするために、入院を予定しています」
『入院?今からですか?』
「かかりつけの病院はいつでも入院が出来るよう準備がされています。今晩から、と思っています」
『……そうですか。……荷物も必要でしょうし、一度顔を合わせたいのですが』
「……わかりました。学校の住所は、」



穂積の誘導に沿う形で、『雪村』という人物は佐倉の恋人であり、同棲をしているということが判明した。
そして、これから来るということも。

おそらく、あの時会った男で間違いないのだろう。



前へ top 次へ

 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -