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「一度、入院させる」
穂積は突然そう切り出した。
放課後、もう一度保健室に来たときだった。
佐倉はあれから目を覚ますことなく、眠っているようだった。
「入院って」
「あくまで検査入院だけどな。身体を休ませてたときに……恐らく久しぶりに、そういう行為をしたんだろ。一気に負荷がかかって体調を崩してる」
「………」
「入院させて例の恋人と離してみるのもありかもしれねぇな」
くたりと脱力して眠っている佐倉の寝顔を見る。
俺に怯えた姿が目に焼き付いて離れなかった。
「乾、お前、何かしたわけじゃないだろうな」
「何もしてねぇよ……あんな態度とられる理由もわかんねぇ」
「………」
フラれたとはいえ、普通に過ごしてきたはずだった。
何かきっかけがあったとすれば、何か変化があったとすれば。
突然現れた、『佐倉の恋人』。
「!」
考え込んでいると、サイドボードに置かれた携帯が光った。
佐倉の制服のポケットに入っていて、邪魔だろうからと取っておいたものだった。
穂積が携帯をとり、着信が切れるのを待って、ディスプレイを開いた。
「……こいつだな」
「!」
待ち受け画面に出ていたのは、これまでの着信やメールの履歴だった。
おびただしい量で履歴を残しているのは、『雪村』という人物。
穂積は少し考え込み、しばらくして佐倉の携帯を耳に当てた。
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