2
「……やっぱりお前か」
「……穂積」
梯子を上って顔を出したのは、保健医の穂積だった。
白衣を翻しながら隣に座って来る。
つられて俺も身体を起こした。
「先生でもサボんの」
「ばか、休憩中だ」
自然な流れでポケットから煙草を出して吸い始めて、ようやく俺のポケットの中に煙草が入っていないことに気付いた。
思えば最近は吸っていなかった。
その理由は、もう、なんとなくわかっていた。
「ん」
穂積は手持ちぶさたになった俺を見越してか、一本煙草を渡してきた。
「……いいのかよ」
「今日だけだ。……佐倉の為に止めたんだろ」
「……うるせぇ」
穂積は勘がいい。
何も言うまいと口を噤んだ。
けれど構うことなく、穂積は口を開いた。
「あいつと何かあったか?」
「……フラれた」
「…………はぁ?」
「昨日あいつの、」
言いかけた瞬間、穂積の携帯が鳴った。
ディスプレイを見た瞬間に穂積の顔が真剣になり、仕事用なのだと気付く。
「はい。……いえ、校内にいます。……佐倉?」
「!」
「わかりました。向かいます」
携帯を仕舞いながら、携帯灰皿に煙草を潰して、
「悪いな、仕事だ」
「今佐倉って、」
「学校に来たらしい。が、体調を崩してる」
「俺も行く」
「……お前なぁ」
フラれて、はいそうですか、と諦められる気持ちじゃない。
略奪とか何とかは考えてはいない。
けれど、気になるものは仕方がない。
友人としてでもいい、力になりたいと思ってしまうから。
「仕方ねぇな」
穂積はやっぱり勘が良い。
にやりと笑って許可を下した。
前へ top 次へ