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「……やっぱりお前か」
「……穂積」



梯子を上って顔を出したのは、保健医の穂積だった。
白衣を翻しながら隣に座って来る。
つられて俺も身体を起こした。



「先生でもサボんの」
「ばか、休憩中だ」



自然な流れでポケットから煙草を出して吸い始めて、ようやく俺のポケットの中に煙草が入っていないことに気付いた。
思えば最近は吸っていなかった。

その理由は、もう、なんとなくわかっていた。



「ん」



穂積は手持ちぶさたになった俺を見越してか、一本煙草を渡してきた。



「……いいのかよ」
「今日だけだ。……佐倉の為に止めたんだろ」
「……うるせぇ」



穂積は勘がいい。
何も言うまいと口を噤んだ。
けれど構うことなく、穂積は口を開いた。



「あいつと何かあったか?」
「……フラれた」
「…………はぁ?」
「昨日あいつの、」



言いかけた瞬間、穂積の携帯が鳴った。
ディスプレイを見た瞬間に穂積の顔が真剣になり、仕事用なのだと気付く。



「はい。……いえ、校内にいます。……佐倉?」
「!」
「わかりました。向かいます」



携帯を仕舞いながら、携帯灰皿に煙草を潰して、



「悪いな、仕事だ」
「今佐倉って、」
「学校に来たらしい。が、体調を崩してる」
「俺も行く」
「……お前なぁ」



フラれて、はいそうですか、と諦められる気持ちじゃない。
略奪とか何とかは考えてはいない。

けれど、気になるものは仕方がない。
友人としてでもいい、力になりたいと思ってしまうから。



「仕方ねぇな」



穂積はやっぱり勘が良い。
にやりと笑って許可を下した。



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