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「立てるか?」



幸いにも、廊下の先には第二保健室がある。
この学校は寮生がほとんどで生徒数も多く、学年に一つの保健室がある。
高二には、この第二保健室が宛がわれていた。

もしかして保健室にいこうとしてたのか、と思いながら顔を覗き込むけれど、佐倉は苦しそうなままだった。
壁に手をついて立ち上がろうとするけれど、足に力が入らないのかぺたんと座ってしまう。



「っは……はあっ、は、」
「……あー……」



仕方ねぇ、と佐倉を横抱きにして持ち上げた。
背負おうにも、佐倉が胸元を頑なに握るから、なんだか憚られる。



(っ、うわ)



思わず、ふらついた。
予想以上に、佐倉の身体は軽かった。

保健室では両手が塞がっていたため、がんがん、とドアを足で蹴った。



「おい、誰だドア蹴ってるやつは……」



がら、とドアが開いて出てきたのは、気だるそうな保健医の穂積。
俺の顔を一瞥して、次に佐倉のことを認識した瞬間、さっと表情が変わるのがわかった。



「さくっ……そっちのベッドにのせろ!」



一気に慌ただしくなり、俺は雰囲気に押されながら近くのベッドに佐倉を乗せた。
佐倉は未だ苦しそうに息をしていて、ベッドに寝るなり踞ってしまった。

いつもはふらふらしている穂積が、珍しく険しい顔で聴診器を佐倉にあてているのを見て、ただ事ではないと思った。



「……もしかして、お前が殴ったんじゃねーだろーな?」
「ちげーよ!……そこで、倒れてた」



穂積は険しい表情を変えないまま、佐倉の制服のポケットに手を突っ込んだ。



「ちっ……ちゃんと飲めっつっただろーが……」



ぽつりと呟いた穂積の手には、数種類の錠剤があった。



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