6
 

朝起きると、雪村さんが頭を撫でていた。
目があって、にこりと笑いかけられた。



「おはよ」



綺麗な笑顔だった。
裸のままベッドに入っていて、少し肌寒い。

上半身を起こしたままの雪村さんの、腕を引いた。



「ん?」



髪を撫でて首を傾げられ、何も言わずに腕を抱き締めた。
まだ眠たくて、もう一度目をつむった。

頭上でくすりと笑う声が聞こえて、ごそごそと雪村さんが潜ってくるのがわかった。



「んぁ、」



ちゅ、ちゅ、と首筋や鎖骨を吸われていく。
夜の痺れは朝になっても残っていて、漏れる声を手で抑えた。



「まだ足りなかった?」



腰をするりと撫でられる。
雪村さんは優しく笑っていた。

僕はこっちの人間だと突きつけられるようだった。
夜の甘い匂いがする。



こうやって爛れて生きていた。
綺麗な場所なんて、今更戻れなかった。

久しぶりの行為のせいで、肺がきりきり痛い。
このまま死ねばいいのにと思う。



何も残すことなんてなかった。
もう、生きていたくなかった。



「もっと」



雪村さんの指を噛みながら言う。

にこりと、彼は笑った。



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