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もう、どうでもよいと思った。
せめて優しくしてほしいと思った。
どうせ逃げられない。
「どこまでシたの?」
「っ、んっ……し、てな……っ」
後孔を指で解されながら、胸をしつこく舐められた。
しばらくそういう行為から離れていて、僕は敏感になってしまっていた。
くすぐったさとは違う感覚に、身体が震えた。
怖かった。
こんな雪村さんを見るのは初めてだった。
今更、操をたてるつもりはなかった。
どうせ身体を拓かれるなら、優しくしてほしいと思った。
雪村さんの首に腕を回すと、一瞬だけ驚いた顔をして、笑ってくれた。
抱き返されて、優しいキスが落ちた。
「俺のものだからね」
甘い言葉を、囁かれる。
もう逃げられなかった。
「ぅ、あぁっ……!」
指を引きぬかれて、違う質量が押し入られる。
久しぶりの感覚に、足がひくひくと上がる。
「……いいこだね」
雪村さんはかまうことなく、自身を埋め込んだ。
腰を撫でて、額にキスを落としてくれる。
「ぁ、あっ、ん、んんっ」
ぎしぎし鳴るスプリングが懐かしい。
優しい、と思う。
こうやって堕ちていくんだなと感じた。
この状況になったのは僕のせいだった。
僕が雪村さんにひどいことをした。
勝手なことをした。
すべて、僕が悪い。
ストックホルム症候群。
ぼんやり言葉を思い出した。
こうやって堕ちるんだと思った。
それでも、かまわなかった。
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