3
 

家に帰ってすぐ、玄関で両手を壁に縫いつけられた。
痛みで悲鳴が漏れそうになるけれど、歯を食いしばって耐えた。



仕事が早く終わった雪村さんは、僕を駅まで迎えに来たのだと言う。
携帯に連絡がきていたものの、普段あまり使わないからか、気付いていなかった。

不審がって見ている乾に、雪村さんは人の良い顔を見せた。
『伊織くんの友達ですか?送ってくれてありがとう』と言い、乾に腕を掴まれたままの僕の腰を抱いて引きよせた。

―――『伊織くんの恋人です』と、一言告げた。



「んっ……ん、ぅっ……っ、」



乱暴にキスをされる。
荒々しく口内を犯されて、息が上手く出来なくなる。
噛まれるようなそれに、唾液が口から伝った。



「あの子、誰?」



ようやく口を離した雪村さんは、至近距離で問いかけてきた。
今までに見たことのない、鋭い目をしていた。

怖くて声が喉に貼りついたようだった。
肩で息をして整えながら、何か答えなければと思うけれど、細い息しか出ない。



「答えなよ」
「っ、やめ……っ」



苛ついたように、雪村さんの手が制服に伸びてきた。
反射的に抵抗すると、肩を壁に押し付けられ、首筋を噛まれた。
喉仏を加減なく噛まれる感触に、ぞっと背筋が凍った。



「いっ……」



殺される、と本気で思った。
たらりと生温かいものが鎖骨まで流れた。
匂いで、自分の血だとわかった。

恐怖で震えて、足に力が入らない。
がくがくとその場に崩れ落ちそうになって、雪村さんが僕を抱えあげた。
寝室に連れられて、慣れた手つきで足に鎖を付けられた。



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