5
目を覚ますと、見慣れない天井があった。
「起きた?」
ベッドに横になった僕の隣に、雪村さんが座っていた。
ペットボトルのミネラルウォーターを手渡されて、身体を起こしてそれを飲む。
雪村さんの家らしいことがわかった。
鈍痛を発する下腹部が、何があったかを思い出させた。
「雪村さ、っ!?」
どういうつもりか問いただそうとして、両足首についた鎖に気付く。
服装は乱された様子はなかったけれど、伸びた鎖は異常にもベッドに繋がれていた。
「俺がどれだけ本気か、思い知らせてやろうと思って」
雪村さんは、にこりと笑う。
やばい、と脳内で危険信号が点滅した。
「逃がしてやらないから。もう、俺の目が届かないところに行くなんて、許さない」
頬にキスをされて、優しいそれとは裏腹の言葉にぞっとする。
「ごめ、なさい、雪村さん……。あの、僕は、雪村さんのことそういう風には」
「聞かないよ。俺はもう決めたんだ」
ぐい、と髪を鷲掴みされて、顔が近付く。
「君の気持ちはもう聞かない。これは俺の自己満足。俺がいないと生きていけないようにしてあげる」
「ぼ、僕が失礼なことしたのはわかってます、謝ります、だから」
「俺はねぇ、もう二度と、君がいなくなったときのあの気持ちを経験したくないんだ」
雪村さんは、歪んでいた。
「もう二度と、逃がさないよ」
前へ top 次へ