6
 

なんやかんやあった後、ようやく晩ご飯を食べた。
放課後一緒に帰って、佐倉の家に入り浸るようになって、この光景も当たり前のようになってきた。

料理を作ってくれた佐倉の代わりに皿を洗って、ソファに座る佐倉の隣に腰を下ろしたときだった。
ぐ、と押しつけられるように拳を突き付けられた。



「……え、何」
「………」



佐倉は無言のまま、拳を前に押し出してくる。
殴ろうとしているそれじゃないと気付いて、その手に触れた。
開かれた手のひらから落ちてきたのは、



「鍵?……ここの?」
「っ……」



顔、真っ赤だ。



「え、もらっていいの」
「だっ……言ったじゃ、ないですかっ……」
「え?」



「そ、傍にいるって、言った……」



嘘だったのかと疑うように、語尾が小さくなっていく。
学校で佐倉がパニックになったあの日、空き教室で確かに俺はそう言った。

学校内や行き帰りだけではなく、私生活に踏み込む合鍵。
思わずぎゅっと、鍵を握りしめた。



「ん、さんきゅ」
「………」
「これで毎日遊びに行けるなー」
「……毎日は迷惑です」
「ひど」



少しだけ、佐倉は笑ってくれた。



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