4
 

「……重かったですよね」



ごめんなさい、と言いながら佐倉が立ちあがろうとする。



「っ」
「おいっ……」



立ち眩みか、身体がふらりと傾いだ。
肩を支えると、俺の腕にしがみつくような手が、そこにはあった。



「そういうことするから、放っておけねぇっつってんだよっ」
「………」
「大丈夫か?気分は、」



佐倉は俯いて顔を上げない。
ぎゅ、と手の力が強くなった。



「……僕は、うまく言葉に出来ないんです」
「………?」
「よく、わからない……自分のことでさえ」



まるで泣きそうな声音のそれに、思わず抱きしめたくなる。
けれど俺の手は、宙を掻いた。

中途半端なそれは、佐倉を混乱させるだけだと思った。
きっと佐倉は、俺の気持ちに気付いていて、それで混乱している。

自己肯定感が低いことは、関わるようになってからわかっていたことだった。



「僕は、そういうことをされるような、資格がないです」
「資格?」
「理由がない、」



気持ちになんて理由はないはずなのに、佐倉はそれを求める。
そうしないと不安で仕方ないように。

だったら言葉にしなければいけないのか。



前へ top 次へ

 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -