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「……重かったですよね」
ごめんなさい、と言いながら佐倉が立ちあがろうとする。
「っ」
「おいっ……」
立ち眩みか、身体がふらりと傾いだ。
肩を支えると、俺の腕にしがみつくような手が、そこにはあった。
「そういうことするから、放っておけねぇっつってんだよっ」
「………」
「大丈夫か?気分は、」
佐倉は俯いて顔を上げない。
ぎゅ、と手の力が強くなった。
「……僕は、うまく言葉に出来ないんです」
「………?」
「よく、わからない……自分のことでさえ」
まるで泣きそうな声音のそれに、思わず抱きしめたくなる。
けれど俺の手は、宙を掻いた。
中途半端なそれは、佐倉を混乱させるだけだと思った。
きっと佐倉は、俺の気持ちに気付いていて、それで混乱している。
自己肯定感が低いことは、関わるようになってからわかっていたことだった。
「僕は、そういうことをされるような、資格がないです」
「資格?」
「理由がない、」
気持ちになんて理由はないはずなのに、佐倉はそれを求める。
そうしないと不安で仕方ないように。
だったら言葉にしなければいけないのか。
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