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「……あ……?」



ぼんやりした頭で状況を把握する。
ソファで眠ってしまったらしく、身体がぎしぎしと痛んだ。

今何時だ、とフローリングに手探りで携帯を探す。



「………?」



とん、とん、と一定のリズムで刻まれる音は、奥のキッチンから流れてきた。
カーテンの向こうはすっかり暗くなっていて、ようやく気付いた。

佐倉の家に来て、眠ってしまったらしい。



「………」



佐倉は俺が起きたことにも気付かず、カウンターキッチンで料理をしていた。

佐倉の家に通い始めてから知ったことだが、佐倉は意外にも料理がうまい。
一人暮らしをしているだけ、料理の腕があがったということもあるだろうが。

俯いた佐倉の顔に、さらさらと髪が下りる。
綺麗な目鼻立ちに、思わず見惚れた。



一目惚れだったわけではなかった。

気になって、放っておけなくて、気づいたら、目で追っていた。
単純で、けれどこんなに純粋な気持ちが、自分の中にあると思わなかった。



(……んだよ、俺、思春期のガキか……)



ぐしゃ、と髪を掻く。
らしくないのは自分でわかりきっていて、けれどそれを理由に気持ちを無くすことなんて出来ない。

同性だからどうだとか、最初の戸惑いはあれど気にならなくなった。
きっと自分は『佐倉』という人間が好きなのだと思う。



「けほけほっ……」
「!」



細い咳が聞こえて、咄嗟にソファから飛び起きた。



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