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素直になる方法なんてわからない。
自分の気持ちなんてわからない。

でも、今自分が思うままに行動してみた。



「……なんすか、この手」



帰ろうとする乾の腕を掴んでみた。

気持ちなんてわからない。
わからないものを伝える気はない。

乾の滲み出る気持ちも、今は応えられない。
それでも許されるとしたら、僕の行動は一つだけだった。



「あ……あがって、行けば」
「……はい?」
「それ、買ってきたんでしょう」



傍らのコンビニ袋を指さす。
前にも乾が買ってきて、美味しいと話をしていたお菓子が透けて見えた。



「いや、お前今帰れって……別に気にしなくていいし」
「……誰があなたのことを気にしますか」
「何気にひどいな」



ほら、また素直になれない。
嘘の仮面を被って、自分を守ることしか出来なかった。

少しずつでも良いと、あなたはきっと、笑ってくれる。
その顔が、声音が、今はもうはっきり思い浮かべられる。



「僕が、食べたいんです」
「……ん」



思い浮かんだ笑顔が、今はもう、目の前にあった。



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