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「……あぁ、ほら、泣くな」
「泣いっ……」



穂積先生が隣に座ってきて、ポンポンと頭を撫でた。
言われてやっと、ぽろぽろ落ちる涙に気付いた。
何の涙なのか、自分でもわかっちゃいない。



「お前は、自分を否定しすぎだ」
「っ……」
「相手の好意を素直に受け止めろ」



素直に受け止めたところで、僕に何ができるのだろう。
僕には与えられるものがない。
奪うことしかできなかった。



「乾は見返りを求めてるわけじゃねぇよ」



心の中を読んだように、穂積先生は呟く。



「ごちゃごちゃ考えずに、あいつに応えてやればいい」
「……わか、な……っ」
「ん、ごめん、焦らせすぎたな」



こんなに優しい先生も珍しい。
そう錯覚してしまうほど、僕は弱っているのかもしれない。



「……あーあ、泣かすつもりなかったんだけどなぁ」



飼い犬に怒られるなぁ、と穂積先生は苦笑して、デスクに戻った。
その瞬間、保健室のドアが開いた。



「……誰が犬飼ってんの?」



何も知らない乾がやってきて、穂積先生が吹き出した。



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