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「……で、揃って遅刻したってのか」
「……僕のせいじゃない」
放課後に保健室に行くと、案の定穂積先生まで遅刻の話は伝わっていた。
各クラスの出欠や病欠の管理を毎朝しているから当然ではあるのだが。
穂積先生はカラカラと大きく笑った。
「何だよもうあいつっ……」
「……何でそんなに笑ってるんですか」
「いやー、もう、あんな体して素直なやつだなーと思ってな」
笑いすぎて痛いのか、お腹を押さえてくっくっと声を漏らす。
「素直?」
「俺この前言ったんだ、ごちゃごちゃ考えずにやりたいようにやってみろってな。気になって仕方ないならずっと気にしてろって言っ、」
机に突っ伏して笑っていた穂積先生が、はっと顔を上げた。
「……今の聞いた?」
「………」
「……ごめん!」
「僕に謝らないでください」
さっきまで笑っていたのに、次は頭を抱えて唸り始めた。
……僕だって馬鹿じゃない、穂積先生の言っている意味もわかる。
『傍にいたら駄目か』と乾は言った。
僕は、それを受け入れた。
その言葉の裏の意味を、わからないわけではない。
わかってて、何も言えずにいる。
「あいつあれだな、もういぬだな」
「……はぁ」
「飼い主も大変だな」
「はい?」
穂積先生が良からぬことを考えているのはわかる。
このにやにや笑いは鉄板だ。
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