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ぐ、と顔を上げさせると、佐倉の大きな目から涙がこぼれた。
前髪をよけさせると、さらに顔がはっきり見える。
―――あぁ、綺麗だなと、思ってしまった。
「俺はお前のこと、結構大事に思ってるけど」
「……?」
「何があったのか知りたいって思ったのは、最初は興味本位だった。でも、何かと気になって、気付いたら放っておけなくなって、」
俺を何を言おうとしているのかと、はっと口をつぐむ。
佐倉はよくわからないようで、きょとんとしたままだった。
そんな表情が、愛しく思えた。
あの時のように、笑って欲しいと思った。
(……もう、認めるしかねぇじゃん、これ)
そっと、柔らかい髪を撫でた。
「俺、佐倉の傍にいちゃ駄目か」
「っ……なん、」
「つーか、何でそういうこと聞くんだよ。お前は俺のことどう思ってんの」
また、びくりと肩を震わせて俯こうとするのを、ぐっと頬を固定した。
けれど目を反らされてしまう。
「僕のこと……邪魔って、思ってない、ですか」
「思ってないって言ったろ」
「…………」
「なんなの、佐倉は俺が邪魔なの、」
「違っ……」
「じゃあ何、どうして欲しいんだよ」
半ばやけくそになって言うと、シャツを掴んでいた手が、微かに強くなった。
「……かないで……」
小さく呟いた佐倉の声は、溶けそうに儚かった。
佐倉は、一人になることを恐れたのだろうか。
そこに、俺がいると思っていていいのだろうか。
確かめるようにゆっくり抱きしめると、そっと、背中に腕が回った。
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