7
「龍は、保健室で知り合ったーとか言ってたけど」
急に間宮が真顔になって、内心びくりとしてしまう。
「……何企んでる?」
「え……?」
「佐倉、売りやってるだろ」
どうして知ってるのかと、身を固くする。
しかし一瞬で、偽ったって、中傷めいた噂が立ったって、構わないと自嘲した。
すべては事実なのだ。
「……今はやってない」
「そう?街で見かけたことあってさ。龍を狙ってるなら、やめたほうがいいよ。あいつ金ねーし」
「そういうっ……わけじゃ、ない、です」
そういう風に、思われていたのか。
僕が売りをしていたことを知ってる人間が、どれくらいいるのかはわからない。
僕自身が何を言われようと構わないけれど、それによって他人に迷惑がかかるのは、望んだところではなかった。
「じゃ、何」
「な、何も……具合、悪かったとき、助けてもらっただけで……」
「ふぅん」
突然に向けられる、少しの敵意に戸惑う。
きっと間宮にとって乾は、大切な友達なんだろう。
僕みたいなやつに、近付いて欲しくないんだろう。
「ま、いいけど。龍に何かしたら、許さねーから」
「っ……」
静かな牽制に、息を飲んだ。
「佐倉っ」
勢いよくドアが開いてびくりとすると、穂積先生がカーテンを割って入ってきた。
「どこ打った?呼吸は」
「平気、なんともない……」
「お前の平気は信じねぇからな、服脱げ」
後から入ってきた乾が、気を利かせたのは間宮を連れてカーテンの外に出た。
体操服を脱ぐと、穂積先生が触診を始めた。
「……顔色、悪いな」
「え?」
「心臓に負荷がかかった……ってわけでもなさそうだな」
何かあったか?と、恐らく二人に聞こえないようにだろう、耳元で穂積先生がささやいた。
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