6
 

「悪い。保健室つれていくから、交代」



乾の声がして、頭にかけられたのが乾のタオルだということがわかった。
視界が悪い中、ぐいっ、と腕を引かれて体育館を後にする。



「大丈夫か」
「へ……平気、だから、試合……」
「馬鹿、今思いっきり心臓に当たってただろ」



後で何かあったらどうする、有無を言わさぬ物言いで、ずんずんと保健室に連れて行かれる。
後ろから、俺も行く、と違う声も聞こえた(確か、淳と呼ばれてた)。

体育館から保健室はさほど離れていない。
けれどドアを開けると、中はしん、と静まりかえっていた。



「穂積のヤロー、いねぇし」
「満月センセ見回りしてたから、穂積も外出てんじゃね」
「まじかよ、使えねぇ」



ベッドに半ば無理矢理寝かされて、乾は穂積探してくる、と言い残して保健室を去っていった。
残ったのは、僕と、あまり話したことがない男だ。



「……痛いか?」
「……少し……」
「……そっか、身体弱いんだっけ。体調とか」
「だ、大丈夫、です」



少し緊張する。
男はあまり気にしていないようで、冷蔵庫から保冷剤を取り出し、タオルに巻いて渡してくれた。



「冷やしときな」
「あ、りがとう……」
「そういや、名前言ってなかったな。俺、間宮淳」
「……どうも……」



間宮はベッドの横に椅子を引きずってきて、寝転ぶ僕の隣で話を続けた。



「佐倉さ……乾と仲良いよな」
「えっ」
「よく話すじゃん」



仲良いとは心外だけれど、確かに他のクラスメイトよりは話すことは事実だ。



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