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迎えたスポーツ大会当日は、良く晴れていた。
インドアスポーツのバスケットに天気は関係ないけれど、やっぱり清々しい気持ちにはなる。
今日まで知識を詰め込んだルールやプレイ方法は、得点板の隣で十分に生かされていた。
「龍、シュート!」
ボールが渡った乾が、その声に反応してシュートを決める。
わぁっ、と歓声が上がって、僕は咄嗟に得点板をいじった。
僕達のチームは十分に上手いと思う。
元々スポーツが出来るメンバーが揃っているのだろう、楽々と点数を決める姿に、少しだけ羨ましく思ったりした。
スポーツなんて、したことがない。
走ることさえ禁止されてきた。
もっと活発に動くことができたら、この身体が自由に動いていれば、今とは違う生き方が出来ていただろうか―――。
「佐倉っ」
「え」
ぼうっとしていた。
乾の声にはっと顔を上げると、コート内の選手がこっちを見ているのがわかって―――。
ガツッと胸元にボールが当たった。
「うっ……!」
想像以上に重いバスケットボールの、それなりにある速度の、思いがけない衝撃だった。
一瞬息が詰まって、思わず咳き込んでしまう。
「おい、大丈夫か!」
「けほっ、ぅ、」
ばたばたと乾が駆け寄ってきて、試合が一旦止めることを告げる笛がなった。
申し訳なくて何か話そうとするけれど、苦しくて顔があげられない。
「なんだ」
「パスミスしたボールがコート外に出て」
「当たったのか」
ざわざわとギャラリーが騒がしくなるのがわかる。
目立ちたくない、そう思うのに、身体が動かなかった。
パニックになりかけたとき、ばさりと頭に何か掛けられるのがわかった。
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