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「え、誰?」
「あ?知らねーの?佐倉だよ」
じろじろと僕のことを見てくるクラスメイトに、乾が雑に紹介をした。
空気のように存在する予定が、こいつのせいでぶち壊しになった瞬間だった。
「龍、いつの間に仲良くなってんの」
「保健室サボり仲間」
「お前やけにあの保健医に気に入られてるよなー」
僕の席の前と右側に座られ、残ったクラスメイトは通路に立つ。
完全に囲まれた状態で、どうしていいかわからずに俯いた。
「……おっまえなぁ、こっち向けこら」
「っ……」
ぐい、と頭を動かされ、ばっちり乾と目が合う。
長い前髪の間からだったけれど。
「んー……秋、髪とめるやつ貸して」
「はいよー」
「ちょっ……」
あれよあれよと前髪を掴まれ、そのまま一つに結ばれる。
視界がぱっとクリアになって、なんだか落ち着かなかった。
「おー」
「初めて顔見た」
「名前知ったのも今日初めてだろ」
周りでごちゃごちゃ言われて、いたたまれなくなる。
早く終わらないだろうかと思わず考えた。
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