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「佐倉は絶対に、自分のことは話さない」



俺が半ば勢いであんなことを言ってしまった後、穂積からそう言われたことがある。
いつものように保健室にサボりに来ていた、午後の日のことだった。



「俺はこの立場上、知ってるけど。言いたくなるようなものじゃないし、正直聞くにも重すぎる」
「……放っておけっつーのか」



思わず拗ねたような声音になってしまって、気付いた穂積がカラカラと笑った。



「何、本気になったわけ」
「……興味本位だっつの」
「ま、どっちでもいーけどね、俺は」



からかうようなそれに一つ文句を言おうとするけれど、途端に穂積が真剣な表情になって、俺は慌てて口を噤んだ。



「佐倉が話しはじめたら、それはお前を信頼してる証拠だ」
「……どうせ俺は信頼されてねぇよ」
「……やめるか?」



穂積の問いは、まるで『やめるな』と暗に言っているようで。



「やめるなら、とっくに手ぇ引いてる」
「はっ、そうだな」



穂積も穂積なりに、佐倉のことを心配しているのだろう。



「佐倉は……自分が必要ない人間だと思ってる」



聞こえた穂積の声は想像以上に低かった。



「誰にも言わないまま、誰にも肯定されずに、ただ必要のない人間だと思ってる。だから、あいつのことを理解したら……」



その懇願が、理解できないわけじゃない。



「………貸しはでかいと思うけど?」
「……十分だ」



密約成立と言うように、穂積は白衣のポケットから、煙草を投げてきた。



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