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「知らないんですか?」
「や、知ってるけど……」
少なくとも、注射というものは一度しかないはず。
どうしてこんなにも貼られているのかが疑問だった。
「………あ、検査だったんです」
「検査ぁ?」
「月1回。血を抜かれたり、注射を打たれたり」
これ以上話をする気はないというように、佐倉は目をそらして袋を漁った。
佐倉はきっと覚えていて、けれどどう反応していいのかわからないように、俺に戸惑いを
隠す。
『俺が知るまで、死ぬな』
俺が、佐倉が抱えている何かを知るまで。
どうして知りたいのかはわからなかった。
でも、『近付きたい』とは確かに思った。
佐倉は知られることを恐れている。
自分の弱さを見せるのが怖いのか、知られてはまずい何かがあるのか、それとも。
「佐倉」
ぐだぐだ考えるのはどうでもいい。
「お前、何でこんなことになってんの」
ぴたりと、佐倉の手が止まった。
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