5
「何か、飲みますか」
「や、買ってきた」
リビングに通され、キッチンに立つ佐倉の問いに答えながら、ガサガサと袋を漁った。
チューハイやら、ビールやら。
もちろんジュースもある。
ビールは自分用だ。
「………」
「これは俺のビール……もしかして、イケる口?」
「違います」
呆れただけです、と小さくため息を吐かれた。
なんとなくテーブルに向かい合わせになって座る。
「では、僕はこれを」
「おう」
佐倉が取ったのは、普通のパックのお茶だった。
そうか、と遅ばせながら思い至る。
薬を飲んでいるやつに、酒は厳禁だ。
身体が火照ったのか、佐倉がおもむろに袖を捲くった。
現れた細い腕に一瞬だけどきりとして、
「……これ」
「え?……あぁ、」
肘のあたりに数か所貼られていたのは、小さな白い絆創膏。
注射の後だということがわかった。
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