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いつだって、思い出すことができた。

「死ぬなら身体なんてどうでもいい」と言った佐倉と、思わず叩いてしまったあとの怯えてる佐倉と、堰が壊れたように泣いた佐倉と。
どうでもいいと、本当に佐倉は思っていて、だからこそ怖くなる。

いつか、桜が散るように、いつのまにか死んでしまうんじゃないか。
だから、こんなに気になって、いかないでほしいと思ってしまう。



――斯くして俺は、ここにいる。



「……いねぇ……」



すっかりお馴染みになった佐倉の家にやってきた。
連絡はもちろんとってない(そもそも知らない)が、金曜日の夜となれば、いるだろうとも思っていた。
しかしチャイムを鳴らしても返答はなく、窓の奥は暗闇であることからも、不在なのだとわかった。

こんな時間にどこへ、と思いながら、ふと一つの答えにたどり着く。
また、身体を売っているのではないだろうか。
しかし穂積にあれだけ止められた矢先、そんなことはないだろうと思ったし――そう、信じたかった。



(……買い物にでも行ってんだろ)



そう決め込んで、ドアの前で腰を下ろした。
隣にお菓子を買い込んだコンビニ袋が座った。

寒空の下で、買ったばかりのジーンズをコンクリートで冷やしながら、俺は何をやってるんだと考えた。
衝動で動いたこの感情を言葉に出来るほど、俺は大人でもなかった。



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