8
自然と目が覚めるという感覚はやけに久しぶりで、忘れかけていた熟睡感にしばらく頭がさえなかった。
思い出すのは昨晩のこと、しかし携帯電話が差すのは夕方で、ほぼ一日寝ていたことに愕然とする。
ベッドのサイドテーブルには、からになった薬。
一体いつ飲んだんだろうかとぼんやり考えていると、リビングから物音がした。
たしか、乾龍平がいた。
何故ここに、という問いの答えは聞いていないと思う。
まさか、丸一日この家に居座っていたとでもいうのか。
「………」
なるべく気配を察せられないよう、静かにドアをあけた。
テーブルにはコンビニの袋があり、中からはジュースやお菓子が覗いている。
傍らにあるのはゴミだろうか。
ソファの背もたれから、髪の毛がひょこひょこと見え隠れしていた。
「……なにしてるんですか」
「あ?」
ソファに寝転んで、漫画雑誌を読んでいるようだった。
「寝過ぎじゃね」
ぱたんと分厚いそれを閉じて、フローリングに転がす。
他人の家だというのに、この有り様。
何か違和感があると思えば、乾龍平は見知らぬ私服姿だった。
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