3
いつからだったか、こんな生き方をし始めたのは。
昔はそれなりに素直な子どもだった気がする。
身体が弱かったのは、今も昔も変わらないけれど。
物心ついたときには、父親はいなかった。
あの女は新しい男をつくっては、僕を邪魔者扱いした。
必要など、なかった。
気づいた頃には、一人だった。
友達何て言うものは、必要なかった。
所詮はその場限りの付き合い、そんな面倒なものは必要ない。
知られない、間に。
誰にも看取られず、悟られず。
―――死んでいきたいと、思った。
音が遠退く感覚がした。
金切り声の混じる音。
『生まれて、こなければ』
ああ、また泣いている。
女は泣きながら僕を見る。
けれど僕は泣いてやらない。
そっと、静かに笑ってやる。
人間なんて、自分が良ければ他人なんてどうでもいいんだ。
産まれてきたくて、ここにいるわけじゃない。
他人の我儘のせいで、僕はここにいる。
ならば、いっそ、殺してくれよ。
「―――佐倉、」
耳元で聞こえた声に、はっと眼をさました。
前へ top 次へ