13
「はぁ?」
ほとほと呆れる。
別に、惚れてるとかそんなんじゃない。
ただなんとなく、事情も知った上でもし死んだりしたら、複雑だし。
……空気に溶けるみたいに、ふっ、と死んでしまいそうな雰囲気が、佐倉にはある。
儚い、という言葉は、こういうことを言うんだろうか。
「ま、どっちでもいいわ。あいつ、あんまり周りに溶け込みたがらねぇし、話し相手でも……いや、」
「?」
「乾が仲良くしてやってたら、佐倉が目ぇつけられるかもな。やっぱ今のはなしだ」
「しね」
「最近の若者は怖いねぇー」
ぶん、と軽く拳を振ると、平手で簡単に止められてしまった。
「……あと、もう一つ」
「ん?」
「別に惚れてるとか、そんなんじゃねぇんだけど……佐倉、相当悪ぃの?」
「……それは興味で聞いてんのか?」
「そう思ってもらっても構わねぇけど」
穂積はため息をついて、ベッドから立ち上がった。
「そこまでは言えねぇな」
「……ふぅん」
「あっさり引くんだな」
「事情ってもんがあんだろ」
「意外と聞き分けいいねぇ」
穂積はカーテンに手をかけて、しゃっと締めて出て行ってしまった。
ただ、少しだけ隙間をあけて、
「……生まれつき、身体が弱いんだ」
「………」
「内臓機能が弱くて、特に心臓に負担が掛かってる。売りしなけりゃ少しは改善するんだろうが、やめたら通院も出来ねぇからな」
にやり、と穂積は笑う。
「あいつのこと、気になって仕方なくなっただろ?」
カーテンが、完全に閉じられた。
前へ top 次へ